モーターやいろいろな機械に大きい電気を流す装置である、電磁接触器や電磁開閉器の事を書こうと思います。
主に使うメーカーは富士電機と三菱電機です。今回は三菱電機製のS-T10などを使って説明します。
まずは電磁接触器ってこんな部品
正面からの写真です。
この電磁接触器はコイル電源がAC200V~240Vです。
そして接点の定格使用電流がAC-3級220Vで11Aのタイプです。
つまりコイルにAC200Vを流すと接点が ガチャン と入って電圧AC220V、電流11Aまでの電気をON/OFFできるというものになります。
AC-3級とは「かご形誘導電動機の始動・運転・停止」に使えるよ、という規定のことです。JISC8201-4-1「低圧開閉装置および制御装置」、および国際規格(IEC)より
前の記事でリレーの事を書いたのですが、基本的な動きはコイルに電気を流すと接点が動くので、リレーとよく似ていると思います。ただリレーは小さい電気や制御回路で使うのですが、電磁接触器はモーターやヒーターなどの大きい電気で使います。
もしよろしければ「リレーの使い方」の記事もぜひ読んでください。
電磁接触器の動き
電磁接触器はリレーと同じでコイル電源に電気を流すとコイルが電磁石になり、磁力の力で接点部分を動かしてスイッチをON/OFFさせる部品です。
写真の上奥側の黄丸の端子(左がA2、右がA1)が電源になります。
写真は三相200VをON/OFFさせるときの配線です。正面手前のメイン端子の左から
端子L1、L2、L3の順に電源などのR、S、Tの電線をつなぎます。
そして負荷側もT1、T2、T3に負荷をつなぎます。
そしてメイン端子の一番右にある端子は上下で補助接点になります。
写真の電磁接触器の補助接点は上下に「13NO」「14NO」と書いてあるのでa接点の補助接点になっています。
この補助接点は補助的な接点のためメイン端子の接点ほど大きい電気は流せません。あくまで制御回路用になります。
a接点、b接点についてはリレーの時と同じで、以下の「MEMO」で再確認してください。
- コイル電源を入れる前は離れていて、コイル電源を入れるとつながる接点をa接点といいます。「NO(ノーマリー・オープン)ともいいます。」
- コイル電源を入れる前はつながっていて、コイル電源を入れると離れる接点をb接点といいます。「NC(ノーマリー・クローズ)ともいいます。」
この電磁接触器にある補助接点は、電磁接触器を使う上で非常に便利な役割をします。電磁接触器の自己保持回路や、可逆電磁接触器などのインターロックなので使います。自己保持や、可逆電磁接触器についてはまた別記事でまとめたいと思います。
電磁接触器の使い方
電磁接触器は次のような使い方をします。絵に描きやすくするためにメイン端子のL1L2L3とT1T2T3の並びは横の流れにしています。
三相モーターの運転、停止
下の図はモーターを動かす回路です。「PLCなどの接点」がOFFなのでモーターは動きません。
「PLCなどの接点」をONにするとA1、A2のコイルに200Vが流れメイン端子の接点が入り、モーターまで電気が流れます。
単相のヒーターのON/OFF
単相のヒーターをつなぐときは下図のようにL2とT2の端子を使わずにつなぎます。
次は電磁開閉器ってこんな部品
正面からの写真です。
先ほど紹介した電磁接触器の下に違う機械がくっついています。この下についている機械をサーマルリレーといいます。
電磁接触器とサーマルリレーの組み合わせの事を電磁開閉器といいます。
サーマルリレーが下に組み込まれることでモーターやヒーターをより安全に制御できるようになります。
このサーマルリレーは1.5kWのサーマルリレーになります。(設定範囲5.2A~8A)
サーマルリレー
ここでサーマルリレーについて説明します。
サーマルリレーはモーターなどが過負荷(過電流)で焼損しないようにする装置です。
内部にバイメタルという熱で変形する金属が入っていて、それにより接点を動かして保護回路を作ることができるようになっています。
サーマルリレーから上に飛び出している銅線は電磁接触器の出力側のT1、T2、T3につながっていて、下奥の〇の3つの端子(サーマルのT1、T2、T3)につながっています。ここに負荷(モーターやヒーター)をつなぎます。バイメタルはT1とT3のところに入っています。T2には入っていません。
- 青〇の二つの端子はバイメタルが作動したときにONになるa接点です。
- 赤〇の二つの端子はバイメタルが作動したときにOFFになるb接点です。
- 黄〇はバイメタルが作動する電流値を設定するダイヤルです。
- 水色□はバイメタルが作動した後に、解除(リセット)するためのボタンです。
- 緑⇒はトリップスイッチです。バイメタルが作動したら下に下がります。細いドライバーなどで下に突くことでバイメタルが作動した状況を作ることもできます。
電磁開閉器の使い方
電磁開閉器は次の図のような配線の使い方をします。絵に描きやすくするためにメイン端子のL1L2L3とT1T2T3の並びは横の流れにしています。
電磁接触器のコイル電源の片方はサーマルリレーのb接点を通るように配線します。
PLCなどの接点がONすることで電磁接触器からサーマルリレーを通りモーターに電気が流れます。
モーターに何らかの異常が発生し過負荷になるとバイメタルが作動します。
こうすることでモーターなどが過負荷でサーマルリレーのバイメタルが作動したときに、b接点の接点部分が離れ、回路が切れるので電磁接触器がOFFになり、モーターへの電気の流れを止めることができます。
このサーマルリレーを使ってモーターが過負荷になったら電磁開閉器の電源がOFFになる回路は基本的な使い方だと思います。電磁開閉器を使うときは必ずこの回路を組み込みましょう。
昔サーマルリレーのb接点を電磁開閉器の電源ではなく、上位コントローラーへの信号に使っている設備がありました。一応サーマルリレーが作動すると上位コントローラーへの信号が切れモーターが止まる仕組みにはなっていたのですが、上位コントローラーが故障してしまい、モーターが過負荷でも停止せず、モーターと電磁開閉器が焼け大変なことになった設備の修理を依頼されたことがありました。
信号を取るならa接点で取り、b接点を正しく使っていれば上位コントローラーの交換だけで済むのにと思ったことがあります。。火災や事故につながるので正しく使いたいですね。
電磁接触器と電磁開閉器のまとめ
- 電磁接触器や電磁開閉器はモーターやヒーターなどで使う大きな電気をON/OFFすることができる。
- 電磁接触器にサーマルリレーがセットになったものを電磁開閉器という。
- サーマルリレーはモーターやヒーターなどの過負荷や過電流で作動するa接点とb接点がある。
- 電磁開閉器でモーターやヒーターをON/OFFさせるときは必ず電磁開閉器の電源の上にサーマルリレーのb接点を通るように配線する。
今回は三菱電機製の電磁接触器と電磁開閉器を使いました。
三菱電機製以外は富士電機製をよく使います。
電磁接触器や電磁開閉器には補助接点を増設したりもできます。
写真のように正面に増設したり横に増設したりできる機種もあります。
写真の増設補助接点は1a1b(a接点1つ、b接点1つ)の増設補助接点です。
この記事でずっと電磁接触器や電磁開閉器と書いてきましたが、普段はどちらも「マグネット」と呼んでいます。サーマルリレーは「サーマル」と呼び、過負荷でバイメタルが作動することを「トリップした!」なんて言っています。
最後に、このブログを書いている人
小さな盤屋を一人で細々と営みながら一人でゆる~くロードバイクを楽しんでいます。
一人ぼっちでロードバイクを始めても楽しめることを皆さんに伝えるためにこのブログをやっています!
就職氷河期世代ですが、なんとか設備メーカーに就職し、いろいろありまして5年ほど前から一人で頑張っています。
このブログが皆さんのお役に立てれば幸いです!!