インバータの使い方(外部信号から正転、逆転、変速動作)

制御盤や電気部品

三相モーターを動かすときに電磁開閉器と同様に欠かせないインバータ。

インバータがあるとモーターの周波数を変えることで、回転の速さを変えたり、逆回転や徐々に加減速などいろいろな制御が可能になります。

今回は外部信号で起動、正転、逆転、変速を行う基本的な動作とエラー出力の配線や使い方の説明をしたいと思います。

「小さなバン屋」では三菱電機や富士電機、最近だとシュナイダーエレクトリック製のインバータを使ったりしています。今回は一番よく使う三菱電機製のインバータで説明します。

インバータの役割(インバータでできること)

一般的にインバータとは直流や交流の電気から、周波数の異なる交流に変換する装置の事をいいます。

制御盤で使うインバータも入力電源は交流ですが、内部で一度直流に変換し、それを設定した交流の電気に作り替えて出力しています。

一度内部で交流を作り変えてるので、入力電源は三相200V以外にも単相100Vや単相200Vなどの仕様があります。三相200Vの電源がない所でも、単相の100V、200Vがあれば三相モーターを回すことができます。

それに三菱電機製のインバータでしか確認していませんが、三相の入力電源の相が変わったとしても、出力の相が変わりませんでした。

インバータでできること

  • 出力側の周波数を変更することでモーターの回転速度を変えることができる。
  • モーター起動時に突入電流を抑えて滑らかに駆動ができる。
  • 電磁開閉器と違い、インバータ1つで正転逆転ができる。
  • PLCなどと組み合わせることで外部信号により起動、正転、逆転、停止に速度変更も数パターンで設定できる。
  • エラーの設定などの細かな設定ができ、エラー履歴なども残せる。

インバータってこんな部品

今回説明するインバータは三菱電機製のDシリーズです。このDシリーズは簡単設定で扱いやすいモデルになっているので選びました。入力電圧は三相200V、出力は200W用で品番は「FR-D720-0.2K」です。

三菱電機製のインバータでは上位機種のEシリーズも多機能にはなりますが基本的には同じ使い方です。

見た目はこんな部品です。正面の写真と、正面カバーと下側の入出力端子カバーを外した写真です。

同じモーターを回転させる電磁開閉器や可逆式電磁開閉器と比べると電子部品感があり、全然違う部品に見えますね。

インバータの配線

端子の役割

三菱電機製Dシリーズのインバータには電源の入力端子と、モーターをつなぐ出力端子が下側にあります。そして正面には制御用やリレー出力などの緑色の端子台が並んでいます。

電源入力端子とモーターをつなぐ出力端子です。

次は制御端子とリレー出力端子です。

リレー出力端子は、そのままリレー出力を出す端子です。主に異常出力として使います。

左からAがa接点、Bがb接点、Cが共通です。

制御端子は左から以下の役割があります。

  • RL・・・低速
  • RM・・・中速
  • RH・・・高速
  • SD・・・接点入力コモン
  • PC・・・DC24V電源
  • STF・・正転始動
  • STR・・逆転始動

次は各端子ごとに詳しく説明していきます。

リレー出力端子と制御端子の使い方

リレー出力端子はインバータの保護機能が発動したときに動作します。PLCなどの入力につないで異常を知らせたりできます。

制御端子の使い方

  • STFとSDをショートさせるとモーターが設定した周波数で正転します。
  • STRとSDをショートさせるとモーターが設定した周波数で逆転します。
  • モーターが正転か逆転しているときにRLとSDもショートさせるとRLの設定した周波数の回転に切り替わります。
  • モーターが正転か逆転しているときにRMとSDもショートさせるとRMの設定した周波数の回転に切り替わります。
  • モーターが正転か逆転しているときにRHとSDもショートさせるとRHの設定した周波数の回転に切り替わります。

RL、RM、RHの組み合わせで最大15通りの変速ができます。

正転、逆転、低速動作をするための回路とパラメータ設定

今回は外部のスイッチを使って正転と逆転(ともに60Hz)、低速(20Hz)で加速秒数1秒、減速秒数2秒でモーターを動かす配線の紹介と、パラメータ設定を紹介しようと思います。

まずは電源入力端子とモーターの配線

前述したように入力端子に三相200V電源、出力端子に三相モーターをつなぎます。

今回のインバータは200Wと小さいですが、実際につなぐ場合は盤内の配線はIV電線やKIV電線の2㎟を使い、インバータの端子には丸端子を使って配線します。


制御端子の配線

今回は低速設定にRM端子を使います。

STFとSTRとRMにそれぞれスイッチをつなぎます。3つのスイッチの共通電線はSDにつなぎます。

この部分は大きな電気が流れる場所ではないので、実際に配線する場合は1.25㎟以下の0.75㎟やAWG18でも問題ありません。


パラメータの設定

今回設定するパラメータは以下の箇所になります。

今回は始動指令は外部から、周波数設定は操作パネルから行います。設定やパラメータは以下のように変更します。

初期値を青変更値を赤で表示します。

  • PU運転周波数を0Hzから60Hzに設定(正転逆転の周波数)
  • パラメータ5を30Hzから20Hzに変更(低速の周波数)
  • パラメータ7を5.0から1.0に変更(0Hzから60Hzまで上がる時間)
  • パラメータ8を5.0から2.0に変更(60Hzから0Hzまで下がる時間)
  • パラメータ79をからに変更(外部信号とPUモードを併用に設定)

上記の設定で完了です。設定方法が分からない方は以下のような順番でボタンを押してください。

①インバータの電源を入れると[0.00]と表示される → ②[PU/EXT]を押す → ③正面のダイヤルを回して[60.00]に合わす → ④[SET]を押す(60.00とFが繰返表示) → ⑤[MODE]を押す → ⑥[P.0]と表示されたら正面のダイヤルで[P.5]に合わす → ⑦[SET]を押す → ⑧[30.00]と表示がでるので正面のダイヤルで[20.00]に変更する → ⑨[SET]を押す(P.5と 20.00が繰返表示) → ⑩正面のダイヤルで[P.7]に合わす → ⑪[SET]を押す → ⑫[5.0]と表示がでるので正面のダイヤルで[1.0]に変更する → ⑬[SET]を押す(P.7と1.0が繰返表示 )→ ⑭正面のダイヤルで[P.8]に合わす → ⑮[SET]を押す → ⑯[5.0]と表示がでるので正面のダイヤルで[2.0]に変更する → ⑰[SET]を押す(P.8と2.0が繰返表示) → ⑱正面のダイヤルで[P.79]に合わす → ⑲[SET]を押す → ⑳[0]と表示がでるので正面のダイヤルで[3]に変更する → ㉑[SET]を押す(P.79と3が繰返表示) → ㉒[MODE]を2回押す → ㉓表示が[0.00]に戻って完了。

小さなバン屋
小さなバン屋

①から㉓まで順番にしていくと設定できると思います。見にくくてすみません。

これで設定は完了です。

試運転とまとめ。

ここまで出来たら各スイッチを押して動かしてみてください。

低速は正転か逆転しているときにスイッチを押すと回転が変わると思います。

始動トルクを上げるときはP.0(トルクブースト)、急停止したいときはP.10(直流制動)の設定など細かな設定もできるので色々試してください。

スイッチをPLCのリレー出力に置き換えることでPLCで操作できるようにもなると思います。

PLCがトランジスタ出力の場合は少し配線が変わります。SD端子ではなくPC端子を使います。PLCとインバータの接続はまた別記事で紹介します。

なかなか一般の家庭では三相200V電源やインバータやモーターは準備できないと思いますが、お仕事で勉強されている方の参考になれば幸いです。

インバータでできること

  • 出力側の周波数を変更することでモーターの回転速度を変えることができる。
  • モーター起動時に突入電流を抑えて滑らかに駆動ができる。
  • 電磁開閉器と違い、インバータ一つで正転逆転ができる。
  • PLCなどと組み合わせることで外部信号により起動、正転、逆転、停止に速度変更も数パターンで設定できる。
  • エラーの設定などの細かな設定ができ、エラー履歴なども残せる。

制御端子の役割

  • RL・・・低速
  • RM・・・中速
  • RH・・・高速
  • SD・・・接点入力コモン
  • PC・・・DC24V電源
  • STF・・正転始動
  • STR・・逆転始動

インバータの出力側にはモーターしかつないではいけない!

昔、メーカーに勤めてすぐのころ、インバータの出力側にモーターと電磁開閉器をつないだことがあります。インバータの出力側から単相の200Vを取ろうと考えました。

モーターが回ると同時に電磁開閉器もONにしたかったので、これはいい案だと思ったのです。

そしてモーターが回っているときに何か臭いなと思い、テスターで電磁開閉器のコイル電圧を測ると、テスターが980Vとよくわからない電圧になり、数秒後に電磁開閉器から煙が出てドロドロに溶けて燃えてしまいました。その後はもう悲惨でした・・・

その時初めてインバータの出力側にはモーターしかつないではいけないことを学びました。

小さなバン屋
小さなバン屋

ブレーキ付きのモーターの場合も同じです。ブレーキの電源はインバータの出力からは取らないでください!インバータの出力側はモーターしかつないではいけません。インバータの入力より上からとるようにしてください。ブレーキ電源の整流器が破損する可能性があります。

ブレーキ付きモーターのブレーキ電源を、インバータの出力側からとっている(ブレーキ同時切り)設備を何台か見たことがあります。一応正常に動いてはいましたが、別回路にするのが基本です。何があるか分からないので必ず別回路にしましょう。

失敗から学ぶことも大事ですが、火災などにつながることもあるので、皆さんも気をつけてください。

最後に、このブログを書いている人

小さなバン屋
小さなバン屋

小さな盤屋を一人で細々と営みながら一人でゆる~くロードバイクを楽しんでいます。

一人ぼっちでロードバイクを始めても楽しめることを皆さんに伝えるためにこのブログをやっています!

就職氷河期世代ですが、なんとか設備メーカーに就職し、いろいろありまして5年ほど前から一人で頑張っています。

このブログが皆さんのお役に立てれば幸いです!!

⇒詳しいプロフィールはこちら

PAGE TOP