今回はシーケンサを使ってインバータを動かし、モーターを制御するお話をしようと思います。
シーケンサやインバータをこれから勉強しようとされている方や、まだ慣れていない方の参考になればと思います。
シーケンサとインバータを使ってモーターを動かすだけでは面白くないので、簡単な開閉だけの自動ドアの回路を考えてみようと思います。
動作条件(自動ドアの動き)
今回は自動ドアを想定した回路を考えてみます。イメージはこんな感じです。

動作条件は以下の条件にします。
- タッチスイッチを押すと開動作開始(インバータ周波数50Hz)
- 扉が開動作中に開方向低速センサーにかかると低速になる(インバータ周波数20Hz)
- 開限リミットスイッチを押すと全開停止
- 全開停止したあと5秒後に閉動作開始(インバータ周波数50Hz)
- 扉が閉動作中に閉方向低速センサーにかかったら低速になる(インバータ周波数20Hz)
- 閉限リミットスイッチを押すと全閉停止
- 加速時間と減速時間は0.8秒にする
今回は閉動作途中でタッチスイッチを押したら反転するなどの細かい動作は省きます。
開閉動作だけでは楽しくないし、せっかくインバータを使うので低速を入れて考えてみようと思います。
制御回路
自動ドアの制御に使うシーケンサは「FX3s-14MR/ES」を使って、インバータは「FR-D720ー0.2K」、モーターは三相200V200Wモーターを使う設定で考えます。
シーケンサの入出力
シーケンサの入出力は下記のように配線します。
入力
- X0・・・・タッチスイッチ
- X1・・・・閉限リミットスイッチ
- X2・・・・閉方向低速センサー(オムロン製アンプ内蔵型センサー反射形)
- X3・・・・開方向低速センサー(オムロン製アンプ内蔵型センサー反射形)
- X4・・・・開限リミットスイッチ
- X5・・・・インバータエラー(インバータの異常を検知)
出力
- Y2・・・・開動作
- Y3・・・・閉動作
- Y4・・・・低速動作
制御回路図
制御回路図を書いてみました。こんな感じです。

実際制御盤を作るときはインバータとモーターの間やシーケンサとスイッチの間に端子台を設けたり、配置図や使用部品リストなども書きますが今回は省いています。
そして動力の部分やシーケンサの入出力の部分などは別々の用紙に書いたりしますが、小さい回路なので今回は一枚にまとめています。
回路図は見慣れていないと何処と何処を電線でつなぐのか分かりにくいと思います。そこで次は絵を用いて電線のつなぎを書いてみようと思います。
配線
実際に電線で配線するように絵をかいてみました。
シーケンサのCOM0、COM1、COM2は見やすくするためにC0、C1、C2の表記にしています。

ブレーカからのインバータまでと、インバータからモーターまでの赤白青の電線はKIV2㎟を想定しています。
ノイズフィルターにつながっている赤白黄の電線はKIV1.25㎟でそれ以外の青い電線はUL1007AWG18の想定です。
X2とX3につながっているセンサーはオムロン製アンプ内蔵型センサー反射形を想定して書いてみました。
オムロン製アンプ内蔵型センサーは茶色(24V)、青色(0V)、黒色(信号線)となっていますので、その色で書いてみました。
シーケンサのEのアース線はKIV2㎟の緑色です。
実際の回路図と見比べてみてください。
インバータの設定
インバータのパラメータは下記のように設定します。
初期値を赤、変更値を青で表示します。
- PU運転周波数を0Hzから50Hzに設定(正転逆転の周波数)
- パラメータ5を30Hzから20Hzに変更(低速の周波数)
- パラメータ7を5.0から0.8に変更(0Hzから50Hzまで上がる時間)
- パラメータ8を5.0から0.8に変更(50Hzから20Hzと20Hzから0Hzまで下がる時間)
- パラメータ79を0から3に変更(外部信号とPUモードを併用に設定)
設定方法が分からない場合は下記の手順で設定してみてください。
①インバータの電源を入れると[0.00]と表示される → ②[PU/EXT]を押す → ③正面のダイヤルを回して[50.00]に合わす → ④[SET]を押す(60.00とFが繰返表示) → ⑤[MODE]を押す → ⑥[P.0]と表示されたら正面のダイヤルで[P.5]に合わす → ⑦[SET]を押す → ⑧[30.00]と表示がでるので正面のダイヤルで[20.00]に変更する → ⑨[SET]を押す(P.5と 20.00が繰返表示) → ⑩正面のダイヤルで[P.7]に合わす → ⑪[SET]を押す → ⑫[5.0]と表示がでるので正面のダイヤルで[0.8]に変更する → ⑬[SET]を押す(P.7と1.0が繰返表示 )→ ⑭正面のダイヤルで[P.8]に合わす → ⑮[SET]を押す → ⑯[5.0]と表示がでるので正面のダイヤルで[0.8]に変更する → ⑰[SET]を押す(P.8と2.0が繰返表示) → ⑱正面のダイヤルで[P.79]に合わす → ⑲[SET]を押す → ⑳[0]と表示がでるので正面のダイヤルで[3]に変更する → ㉑[SET]を押す(P.79と3が繰返表示) → ㉒[MODE]を2回押す → ㉓表示が[0.00]に戻って完了。

①から㉓まで順番にしていくと設定できると思います。見にくくてすみません。
プログラムの作成
GX Works2
今回は三菱電機のシーケンサエンジニアリングソフトウェア「GX Works2」を使って製作しようと思います。
まずは「GX Works2」を開きます。開くと次のような画面が開きます。

上のツールバーの「プロジェクト」→「新規作成」とクリックしていくと下の画面になります。

シリーズを「FXCPU」、機種を今回はFX3s-14MR/ESを使うので「FX3s」、プロジェクト種別「シンプルプロジェクト」、プログラム言語を「ラダー」に設定して「OK」を押します。
すると下の画面になり、ラダープログラムを入力する画面になります。

プログラムの作り方などの細かい話はまた別の記事で書こうと思います。
プログラム
とりあえずプログラムを下記のように作ってみました。


すみません、プログラムの画像を分けてスクリーンショットを取ったので途中で切れていますが、実際は最初から最後までつながっているプログラムです。
とりあえず内部リレー(M)などを極力使わずに、一番シンプルに短いプログラムを目指して作ってみました。
プログラムの作り方は人によって全然違うと思います。皆さんも実験できる環境の方はいろいろ遊んでみてください!

自動ドアの実機が無いので想像してプログラムを作ってみました。
また時間のあるときに試作のモーターとスイッチで試運転してみます。間違えていたら修正して更新します!
デバイスコメント
各デバイス(デバイスとは入出力接点や内部リレーやタイマなどのこと)にはコメントを入力できるのでコメントを入れてみました。
ほとんど回路図の表記と同じにしました。XとY以外に今回T(タイマ)だけ1つ使いました。
- X000・・・・タッチスイッチ
- X001・・・・閉限リミットスイッチ
- X002・・・・閉方向低速センサー
- X003・・・・開方向低速センサー
- X004・・・・開限リミットスイッチ
- X005・・・・インバータエラー
- Y002・・・・開動作
- Y003・・・・閉動作
- Y004・・・・低速動作
- T0・・・・自動で閉まるタイマ(T0 K50)
Tはタイマ、Kはその後ろの数字が10進数であることを表します。
FX3sシリーズのT0~T62は100ms秒を扱うタイマなので K50=5秒 です。
つまりT0は、X004がONした5秒後にONするタイマリレーということになります。
まとめ
今回は自動ドアの制御盤を想定してシーケンサとインバータとモーターを使った回路を考えてみました。
シーケンサを勉強するのに丁度いい内容だと思います。
実験などができる環境の方はぜひ参考にして動かしてみてください。
もちろん細かい条件を想定すると、もっと長いプログラムやインバータの設定になると思います。
例えば
- 開動作と閉動作でスピードを変えたい。
- 電源投入時、全開位置や全閉位置ではない場所に扉がいた場合はどう動くのか。
- 扉が動いているときにタッチスイッチを押した場合はどうするか。
- 自動で閉まる時間をシーケンサにもともとついているアナログボリュームで設定できるようにしたい。
など、条件を増やせばそれに合わせて回路図やプログラム、各機器の設定も複雑化してくると思います。
もうワンステップ複雑にするなら開閉位置や低速になる位置をエンコーダで設定するような条件で作ってみても面白いかもしれません。
自動ドアの動きもなかなか奥が深いですね。
シーケンサやインバータをこれから勉強しようとされている方や、まだ慣れていない方の参考になれば幸いです。
制御盤を作るのに資格は必要ないですが、電気工事士を持っているのと持っていないのとでは知識はもちろん、周囲からの信頼も違います。制御盤や電気に興味を持っている方は、最初のステップとして電気工事士を取得してみてはいかがですか?
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最後に、このブログを書いている人

小さな盤屋を一人で細々と営みながら一人でゆる~くロードバイクを楽しんでいます。
一人ぼっちでロードバイクを始めても楽しめることを皆さんに伝えるためにこのブログをやっています!
就職氷河期世代ですが、なんとか設備メーカーに就職し、いろいろありまして5年ほど前から一人で頑張っています。
このブログが皆さんのお役に立てれば幸いです!!