私(小さなバン屋)が作る制御盤や配線で使う電線を紹介しようと思います。
自立式の大きい制御盤などは、大きい電気を使うので銅バーを使ったりしますが、小さな制御盤だと電線で作れます。
盤内で使う電線
- IV電線(600Vビニル絶縁電線)
より線(複数の細い銅線でできている)をよく使います。程よい硬さでピンっと真っすぐに配線したり、角度をつけやすいのが特徴です。硬さもあるので、狭い場所などでは少し配線しにくいです。
主に電源のブレーカーの下からモーターまでの配線など、大きな電流が流れる回路に使います。
一般的に一番細くても1.25㎟からになるのでPLCなどの24V回路などでは最近は使わなくなりました。
盤のスペースに余裕があって、ピシッと配線したい時などによく使います。
- KIV電線(電気機器用ビニル絶縁電線)
IV電線よりも、より細い複数の銅線でできていて、可とう性があります。とても柔らかく配線しやすいのが特徴です。ただ結構ふにゃふにゃしているので、配線ダクトから出た場所では見た目が悪くなるので、美しさを求める場所ではIV電線の方がキレイに配線できます。
使う場所はIV電線とほとんど同じです。ただKIV電線には0.75㎟と一つ細いものがあるので、PLCの配線などにも使ったりします。
リレーだけの制御盤やスペースの無い制御盤を製作するときはIV電線だと大変なのでKIV電線は助かります!
- UL電線(機器内配線用 耐熱ビニル電線)
UL規格の電線で私はUL1007電線をよく使います。IV電線やKIV電線は太さを㎟やSQ(square millimeter 平方ミリメートル)で書いていますが、UL電線はAWGというアメリカの規格で表記されています。
程よく芯があり、AWG18(だいたい0.82㎟)でもKIV電線0.75㎟より外形が細いのに、ふにゃふにゃしていないので使いやすいです。
リレーだけの制御盤やDC24VなどPLCの回路や信号線のところは、ほとんどUL1007電線を使っています。ただKIVと比べると少し値段が高いです。
盤内の電線の色はいろいろあるので、配線する電圧や場所で色分けしています。
AWG規格だと数字が大きくなるほど電線が細くなるので、ややこしいですね。
ちなみに「より線(複数の細い銅線でできている)」は㎟(SQ)で表しますが、「単線(一本の銅線でできている)」は直径の㎜で表記されているよ。
二次側配線(制御盤の外)でよく使う電線
- VCTF(ビニルキャブタイヤコード)
搬送機械や色々な設備のモーター配線、スイッチ信号やセンサーの電源や信号、いろいろな制御盤まで配線するのに使います。柔らかく値段も安いので使用環境が良くて配線ダクトの中などに配線する場合はほとんどVCTFを使います。
被覆はグレーで太さも0.5㎟から2㎟あり、線心数も20芯や30芯まであるので使いやすいです。
配線する距離にもよりますが、小さいモーターや200Wや400Wのモーターなら1.25㎟や2㎟のVCTFを使用します。
センサーなどの場合は0.5㎟でもいいのですが、あまり細いと扱いにくいので私は予算的に問題なければ0.75㎟をよく使います。
近くにあるモーターとセンサーなどの信号線を同じVCTFで配線するとしても、必ずモーターの線と信号線は分ける必要があるよ。
例、モーターVCTF(6芯×2㎟) センサー(3芯×0.5㎟)
- SVCTF(ソフトキャブタイヤコード)
SVCTFはソフトVCTFという意味で柔らかく耐寒性がある電線です。使い方はVCTFとほぼ同じですが、可とう性があり、移動させたりする機器の配線などに使ったりします。ケーブルベアでもロボットの関節みたいに頻繁に曲げ伸ばしするところまでは使えませんが、多少の移動部分の配線ならSVCTFを使います。
持ち運びするような機械の電源や、特殊防火扉、防熱扉のヒーターやスイッチの電線に使っています。扉が開閉して動く部分で使います。
マイナス20℃~30℃位の寒い冷凍倉庫内の固定配線ではこのSVCTFを使います。(マイナス20℃~30℃では移動電線としては使えません。)固定配線ならVCTFではパキッっと折れてしまうような寒い所でも使えるよ。
- SVCT(ソフトキャブタイヤケーブル)
SVCTFはコード(300V以下での使用)ですが、SVCTはケーブル(600V以下での使用)となります。以前はあまり使うことがなかったのですが、被覆がSVCTFより分厚いので、電圧でというよりは外からの力に対して高い安全性の移動電線として、最近よくお客様から指定されることが増えました。
寒い場所の配線や使用環境が良くない場所の移動電線として最近よく使っています。
- サンライト3SX(電子機器配線用耐油柔軟性ビニルキャブタイヤコード:シールド付き)
4芯×0.5㎟をエンコーダの配線などに使用します。耐油性、柔軟性があるので配線しやすくシールドがあり、さらに心線を撚っているのでノイズにも強い構造になっています。
エンコーダとはモーターが回転すると信号を出す装置です。とても小さな電気信号が高速パルス(短い信号)で沢山出てきますので、VCTFなどを使うとノイズの影響で上手く信号が届かない症状が起きてしまいます。エンコーダの信号がうまく伝わらないのは装置として致命的なので、信頼性の高いサンライト電線を使うようにしています。
他のシールド線を使ったりもするけど、客先指定があるので耐環境の強いサンライト製の電線を使っています。環境が悪い場所での配線で、昔痛い目を見たのでそれ以来使っています。
- 倉茂電工のVCTやVCTF
ケーブルベアの中の配線や頻繁に屈曲を繰り返すところは倉茂電工のVCTやVCTFを使うようにしています。VCTやVCTFでも使用条件に合わせていろいろな種類があるので使用条件に合わせて選定しています。普通の他メーカーのVCTやVCTFより値段は高いですが、屈曲を繰り返す場所では必ず信頼のある倉茂電工製の電線を使用しています。被覆の色は黒になります。
たまに使う電線
- CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)
固定された制御盤に動力電源(三相200V)を引っ張るときに使います。家庭内の配線で使うVVケーブルよりも大きな電気を流せ、耐環境性も高いです。ただ硬くて柔軟性がなく被覆が剥きにくいので慣れが必要です。
- 2CT(ゴムキャブタイヤケーブル)
柔軟性や耐寒性に優れているのですが、とても剥きにくいです。心線をストリッパーで剥こうとしても「びょ~ん」って伸びて剥けないので扱いがとても難しいです。最近ではSVCTFを使うことが多くなり、2CTはほとんど使わなくなりました。
最近は作っているところも少なく、昔は6芯以上の芯数もあったのですが、私の仕入先では4芯までしか手に入らなくなっています。
ゴムアレルギーのある私は2CTケーブルを触ると手の平が痒くなるのもあって使わなくなりました・・・
- 2PNCT(ゴムキャブタイヤケーブル)
2CT同様に柔軟性や耐環境性に優れています。屈曲を繰り返す場所でも使えますが、同じ2PNCTでも細かく種類があり、使用環境による選定が必要です。入手も私の仕入れ先では細かい仕様を選定するのが難しく、使用感も2CT同様扱いが難しく、被覆も分厚く太くなるので最近は指定がなければあまり使わなくなりました。防爆の雰囲気の場所などは2PNCTを使うように指定されます。
- VFF(ビニル平形コード)
店舗などにある自動ドアのレール内配線をする機会があるのですが、その時によく使います。太さも0.5㎟~2㎟まであり、狭い所や小さな穴でも通せるので機器内での配線で役立ちます。
電線の選定
以上が弊社「小さなバン屋さん」で使う電線になります。
電線の選定って難しですね。
私はいつも以下のことに気を付けて選定しています。
- どのような用途で使うか。(固定なのか移動なのか屈曲なのか)
- つなぐ機器の定格電圧・定格電流。
- 配線する場所の環境。(屋内、屋外、直射日光や温度。油などがかからないか)
- 使用ユーザー様や機械メーカーから指定がないか。
- 選定に迷ったらオーバースペックで。
- 安全第一
こんな感じで日々コストに悩みながら選定を頑張っています。
これから制御盤を作ろうと考えている方や、FA機器に興味のある方の参考にしていただけたらと思います。
最後に、このブログを書いている人
小さな盤屋を一人で細々と営みながら一人でゆる~くロードバイクを楽しんでいます。
一人ぼっちでロードバイクを始めても楽しめることを皆さんに伝えるためにこのブログをやっています!
就職氷河期世代ですが、なんとか設備メーカーに就職し、いろいろありまして5年ほど前から一人で頑張っています。
このブログが皆さんのお役に立てれば幸いです!!